2013年1月3日木曜日

「いのちの感性」を取り戻す年にしよう!

 新しい年は、人のこころをリセットさせる。こころには時間の制約も空間の制約もない。その気になれば瞬時に転換できるのがこころと言うものだ。そんな便利なこころを持ちながら、人は驚くほど変わらないこころをもまた持っている。

 昨年の暮れには、「アラブの春」ならぬ「日本の春」が来るかも知れないと期待もしたが、多くの国民は再び、経済や便利さという妄想を追いかける道を選んでしまった。更なる悲劇が起こらんことをこころから願うばかりだ。

 しかし、そうした過剰な豊かさや便利さは、人間の感性を間違いなく貧しくさせる。車は人の足を萎えさせ、高速列車は、旅の途中の楽しさを奪った。携帯電話は、人の触れ合いの嬉しさを減少させ、ナビゲーターは、方向を見定める感性を鈍くさせた。自然との触れあいを求める人々が増え、健康法やランニングブームが社会現象なのは、現代人のそうしたいのちの危機の現れだ。

 本来、物質的な豊かさとは、人間がより幸福に生きるための目的だったはず。しかし、それを求めれば求めるほど身体とこころは貧しくなってしまった。そんな答えは知ったはずなのに、再び我々は同じ道を歩もうとしている。お金やモノが人生の目的になったところに日本人の最大のジレンマと悲劇がある。「知足(足るを知る)」は、過剰な欲望を戒める素晴らしい言葉だが、我々は、すっかりそんな生き方を忘れてしまった。

 こうしたタガの外れた欲望は、食の世界に於いてはさらに明白だ。外食や総菜もの、ファーストフードやコンビニ食が当たり前の食事となった。買っては捨て買っては捨てている美食、飽食が食事になった。それでも足りずに機能性食品、サプリメント、栄養剤を買いにドラッグストアに駆け込む。一億二千万総人口が「栄養不足心配症候群(シンドローム)」にかかっている。

 しかし、人の身体は、過剰な栄養分を摂り込めば摂り込むほど、健康を維持するための機能が衰える。栄養剤は、飲むほどに自力で栄養を造り出す力が衰え、免疫力、治癒力の元となる腸内細菌(バクテリア)を減少させ、いよいよ食物から栄養を取込むことの出来ない身体を造ってしまう。

 病人が増え、栄養失調の患者が激増している事実が、現代人の食べ方の過ちを裏付ける。日本人の心身は完全に本来の感性と力を失ってしまった。満足しないいのちは「もっともっと」を追いかける。

 食をつつしみ、簡素な生活に美と豊かさを感じ、自然と触れ合うことに喜びを感じていた日本人の感性をもう一度取り戻すこと。そんな身体性の回復なくして、日本の再生も発展も絵に描いた餅となる。今年こそは一人一人の国民がそれを実行することを心から祈りたい。

 今日もまた、テレビの株式市場が、人生の豊かさだといわんばかりに株の数値の上がり下がりを報じている。いつの日か、国民の総幸福度(BNH)がテレビで流される日が来ることを願うばかりである。宙八