2016年4月29日金曜日

「津波てんでんこ」から学ぼう

 津波から命をどう守るかで有名になったのが「津波てんでんこ」だ。これは、史上、再三津波被害のあった岩手県大船渡市に古くから伝わる教えだが、東北大震災の体験から、いかにこれがあらゆる危機に際して現実的且つ適切なアドバイスであるかを改めて感じている。

 フクシマ第一原子力発電所から21キロ地点の山中にある我が家は、津波の被害にこそ会わなかったが、大量の放射能が降り注いで住めなくなってしまった。地震の直後にいち早く危険を察知して即日自主避難をしたが、今思えば、これは私達なりの「原発てんでんこ」であった。この行動のお陰でその後の連続爆発からも回避でき、家族をまったく被曝させずに済んだ。

 この言葉を世に広めたのが、大船渡市生まれの津波史学者故山下文男さんだ。一見これは、他者を顧みない自己中心の行動と思われがちだが、この効果を、京大の矢守克也教授は、「自助原則の強調」「他者避難の促進」「相互信頼の事前醸成」「生存者の自責感の低減」とまとめ、「正しく危機を生き残るための社会的意味」を持つものであることを指摘している。

 激動の世界では、あらゆる分野に命の危機が潜んでいる。食に関して言うなら、TPP(還太平洋経済連携協定)による食の自由化は、間違いなくこれまで以上に食の豊かさをもたらす反面、そこには必ず落とし穴が潜んでいる。

 いのちは食によって造られているのだから、食ほど直接命の危険につながるものはない。食に対する無知、無関心は、即刻命取りとなる。美食、飽食による文明病の激増がそれを見事に物語っている。ぜひそれぞれが食に対する感性と判断力を高め、命を守るための「食のてんでんこ」を実行していただきたい。